研究概要
- 外国人客にとっての「旅館」の経験価値を論考するため、Tripadvisor に投稿された日本語と英語の口コミを比較・分析(因子分析)した。
- 日本人客は温泉や広い部屋と風呂など宿内での非日常体験に価値を感じる一方、外国人客は、旅館滞在を含め、宿までのアクセスや周辺の散策といった一連の異文化体験に価値を感じることが判明した。
データについて
- 分析対象:Tripadvisorが主催する 「外国人に人気の日本の旅館2020」上位20の宿の日本語と英語の口コミ
- 期間:2003 年6月から 2021年10 月
- レビュー数:日本語 1086 件と英語1065 件
訪日外国人観光客の”旅館”における経験価値は何か?
データの前処理として、各レビューに対して切片化(英語の場合は各語ごとに分割、日本語の場合は意味を持つ最小の単位に細分化)を行い、その後因子分析を行った(因子分析:たくさんのデータが持つ関連性から、その背後にある構造や動機を分析する統計的手法)。
日本語レビューの因子分析では、4つの因子までを解釈の対象とし、それぞれ「温泉風呂」「広い部屋と風呂」「サービス」「宿泊して食事」と解釈した。英語レビューの因子分析では、4つの因子までを解釈の対象とし、それぞれ「食と部屋での一時」「旅館の料金と街並み」「宿へのアクセス」「船で川渡り」と解釈した。
英語の第2因子「旅館の料金と街並み」のレビュー例:”Good value for the price. It is a fair walk to other parts of town (e.g. Gion district) but easy to find your way and local area maps were provided.” 宿泊価格に対する価値が優れており、また宿周辺地域の街並み散策により日本情緒を楽しめる。
英語の第3因子「宿へのアクセス」のレビュー例:”Since it was a holiday there was no bus service running which we did not know, and it is about a half an hour from the Ryokan by bus/car to the train station thru the windy mountains.” 車を所有しない、あるいは、異国でレンタカーを運転することが不安な外国人客にとって、地元公共交通を含めた宿へのアクセスは重要であり、電車・バスなど日本の公共交通を楽しんでいる。
日本語レビューでは上記のような因子が抽出されず、館内での事柄に経験価値を感じていた。一方で英語レビューでは宿へのアクセスや宿周辺での経験など館外での事柄についても経験価値となっていることが判明した。